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サンドラ「…」
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ミラ「…」

モニカ「…」 
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 アイアンハンド「…騒ぎ声がしたが、また喧嘩か?」

アイアンハンド「俺は英気を養えとは言った。だがな、それの使い所を間違えられちゃあ困るんだよ」 

アイアンハンド「作戦決行の日も近付いてんだ。あんまり考えなしに暴れるようなら、またゲンコツ食らわしてやるからな」

サンドラ「…」
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アイアンハンド「…おい、聞いてんのか?」

アイアンハンド「おい!…って、んン?」enb 2015_02_13 11_47_49_21
サンドラ「…やあ。久し振りだね」

アイアンハンド「…テメェは…」

サンドラ「…ボクが誰だか、わかる?」

アイアンハンド「…生きてやがったとはな、サンドラ…。あの時の小娘が、随分デカくなったもんだ」

サンドラ「…覚えててくれてるとはね」

アイアンハンド「テメェのことは忘れてねぇよ。忘れるはずがねェ」

アイアンハンド「あんなにいい声で鳴く女なんてそういねーからな。テメェが逃げた時、崖から落ちて死んじまったって聞いた時は心底残念だったよ」

サンドラ「…ッ」

アイアンハンド「今更戻ってきて何のつもりだ?まさかヨリを戻してぇって訳じゃねぇだろ?」

アイアンハンド「お前、随分と女を上げたじゃねぇか。特にその胸、デカくなりすぎだろ!…いいぜ?戻りてえって言うなら歓迎してやる。逃げやがったことは水に流してやるさ」

サンドラ「…ふざけるなッ」 
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サンドラ「ボクがこれまでどんな思いをして生きてきたか、お前にはわからないだろう!!

サンドラ「…わかってもらう必要もない。お前は今日、ここで死ぬんだ…!」

アイアンハンド「…ククッ…クフフフフフ」

サンドラ「…何がおかしい」

アイアンハンド「いやぁなに、今のカッコつけてるお前を見てるとよ、いつも泣き喚いてばっかりの、あの頃の姿が目に浮かんでよ」

アイアンハンド「その落差?ギャップっていうのか?それが面白くて面白くてよ!笑いが止まらねぇ」

サンドラ「…今の自分の立場、わかってるのか?お前の仲間は全員死んだ。ボクたちが殺した。残ってるのはもうお前だけなんだぞ!」

サンドラ「直に衛兵隊もやってくる!ハジバール、お前はもう終わりなんだ!!」

アイアンハンド「…ああわかってるさ。仲間は全滅、計画も台無し、信じ難いことだが、これぞ絶体絶命って奴だな。…だが、それがどうした?」

サンドラ「…何?」

アイアンハンド「仲間がいねぇって言うんなら、また集めりゃいい」

アイアンハンド「衛兵共が乗り込んでくるって言うんなら、今ここでお前を殺してさっさと逃げればいい」

アイアンハンド「俺はハジバール・アイアンハンド!!アイアンハンド団には他に何も要らねぇ」

アイアンハンド「俺さえ生きてりゃいい。俺さえ生きてりゃあ、いくらでもやり直せる!!まだ終わってなんかいねぇ!!」

サンドラ「…呆れた。この状況でよくそんな虚勢が言えたものだ」

アイアンハンド「虚勢?虚勢なんかじゃないさ。確たる実力の元に裏打ちされた自信ってやつだよ」

アイアンハンド「むしろお前の方じゃねぇのか?虚勢を張ってるのはよ。気付いてねぇかもしれねぇけどよ、手、震えてるぜ?」

サンドラ「…ッ!」

アイアンハンド「強がったって根っこは同じさ。どんなにデカくなったところで、お前は小娘のままだ。俺の前じゃ泣き喚き、許しを請うことしかできねぇ。昔のままなのさ」
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アイアンハンド「もう一度それを、思い知らせてやる
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サンドラ「…ミラ、モニカ。さっきも言ったけど、手出しは無用だよ」
 
モニカ「…」

ミラ「…サンちゃん…」

サンドラ「これはボクの戦いだ。ボクがやらなくっちゃあならない。ボク自身の手で終わらせなくちゃいけないんだ」
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サンドラ「ハジバール、この時をずっと待っていた!お前と剣を交える時を!お前をこの手で殺せる時を!enb 2015_02_13 12_09_12_10
サンドラ「今こそ、決着を着ける!!!

ブゥンッ
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ガキィン!!
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サンドラ「くっ…!」

アイアンハンド「サンドラ、てめぇ…その剣、どこで覚えた」 

サンドラ「教えてもらったことなんてないよ…自分なりに鍛錬を積んできたんだ。お前を殺すために!」

アイアンハンド「我流ってか…?ハッ!まさかてめぇにそんな才能があったとはな」

アイアンハンド「こりゃぁもったいねぇことをしたなぁ?それを知ってりゃあ、お慰み以外にも使ってやったかもしれねえってのによ!」
 
サンドラ「…ッ、減らず口を…!まだまだ、ボクの力はこんなものじゃない!」

アイアンハンド「おもしれぇ!今度はこっちからいくぜぇ!」
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アイアンハンド「おりゃああああっ」
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サンドラ「なんのっ!」

アイアンハンド「チッ、確かに、いい腕だ!とても我流とは思えねえ。それは認めてやる」

アイアンハンド「だがなぁ、剣の先輩としてひとつアドバイスをしてやるぜ…振りが大きすぎるんだよてめぇは!

サンドラ「!」

アイアンハンド「そこだぁっ!

ブオォンッッ
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サンドラ(この振り下ろしは…ヤバイッ!!)
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ガァァアアンッ…!!
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サンドラ「うッ…ぐ…っ!」ビリビリビリビリ

アイアンハンド「いいか、振りのデケェ一撃ってのはこう使うんだ。何も考えずに振り回せばいいってもんじゃねぇんだよ!」

アイアンハンド「休んでる暇はねえぜ、サンドラ?まだ俺の番は終わってねぇ!」
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サンドラ「くそ…っ!」

ガキィン…
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サンドラ「う…ッ!そ、そんな…っ」

アイアンハンド「おいおい、どうした?今のはそんなに力込めてねえぞ?」

サンドラ(さ、さっきの一撃で…腕が痺れて…力が入らない…ッ!) 

アイアンハンド「もう少し楽しませてくれると思ったんだがなぁ?ほれ、もう一撃だ!」

サンドラ「…っ!」

カァァアァァアァアン……
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 サンドラ「しまっ…!け、剣が…!」
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サンドラ「そ、そんな…っ」

アイアンハンド「…フン、終わりか」

アイアンハンド「俺を殺すために生きてきたっつー割には大したことねぇな…その程度の力で俺に勝てるとでも思ってたのか?」
 
アイアンハンド「だとしたら俺を見誤りすぎだぜ。俺が何故アイアンハンドと名乗っているのか、それをもう少し考えたほうが良かったな」

サンドラ「くっ…ボクのこれまでは…全部無駄だったっていうのか…」 

アイアンハンド「ああ無駄だよ。無駄無駄。復讐なんぞ考えずに、怯えて隠れて生きてりゃあよかったのさ」 

アイアンハンド「折角俺の手から逃れられたってのに、馬鹿な真似をしたな。サンドラ」
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 アイアンハンド「お別れだ。最期にお前の悲鳴、久しぶりに聞かせてもらおうじゃねぇか」

 サンドラ「…っ」

ヒュッ
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アイアンハンド「…んなっ!?」
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モニカ「悪いわね、サンドラ…さすがにこれ以上は見てられないわ

アイアンハンド「…てめぇら…手は出さねえんじゃなかったのかよ」

モニカ「…私たちは一度もそんなこと言ってないわ。あなたが勝手に思い込んでいただけでしょ?」

サンドラ「このアマ…ッ!」

サンドラ「やめろ、モニカ…!これはボクの戦いなんだ…!」
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 ミラ「サンちゃんのアホ!どアホ!大アホ!!

サンドラ「み、ミラ…キミまで水を差すのか…っ」

ミラ「いつまで意地張ってんねん!意地を張るんは別に構へん!でもな!意地張って死ぬんはアホや!アホのやることやで!」 

サンドラ「…アホでも構わない…ボク自身の手で、ボク自身の命でケリを付けるんだ…」

ミラ「あーもう!自分もうええわ!話にならへん!」

ミラ「これだけは言うとくでサンちゃん!サンちゃんは独りやない!ウチらがおる!仲間がおんねん!」

サンドラ「…仲間…?」

モニカ「そういうこと。全部自分独りで背負う必要なんてないわ。後は私たちに任せない」

サンドラ「……」
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ミラ「さあーおっちゃん!覚悟しいや―!次はウチが相手やー!」

アイアンハンド「ひ、卑怯な真似を…!こんなの聞いてねぇぞ…ッ!…!」

モニカ「山賊のあなたにだけは言われたくないわね」
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アイアンハンド「ち、畜生!やってやる!お前ら二人くらいどうってことねえ!俺はアイアンハンドなんだ!!」
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ミラ「お姉の矢効いたんやろ?動き遅いでおっちゃん!くらえ盾殴り!」

アイアンハンド「う、うぐ…っ」

ミラ「胴体がら空き!!行くでえええええ!!」
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ミラ「おりゃ―――――っ!!

アイアンハンド「うぐおおおおおおおおおおっ…!
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アイアンハンド「そんな…この俺が…俺は…アイアンハンド…だぞ…てめえら…よくも…こんな…
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アイアンハンド「サン…ドラ…てめえ…てめえ…だけは…」ガクッ



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サンドラ「…ありがとう、ミラ、モニカ。キミたちの助けがなかったら、ボクは何もあのまま死んでいただろう。でも…」

サンドラ「くだらない意地、と思うかもしれない。…それでも、アイツとだけはボク自身の手で、ボク自身の力だけでケリを着けたかった…」

モニカ「水を差したことは謝るわ。…でも、あなたを見殺しにするなんてできなかった」

ミラ「さっきはアホなんて言ってごめんな?でも、ウチらホンマにサンちゃんのこと心配やってん…」

サンドラ「…仲間、だからかい?」

モニカ「…ええ、そうよ」

サンドラ「…これまでのボクにとって、仲間なんて目的を遂げるまでの一時的な付き合い、仕事上の相手でしかなかった」

サンドラ「…キミたちも、それと同じだと思っていた。でもキミたちが言う仲間っていうのは、違う意味だったんだね」 

ミラ「仲間っていうのは、楽しいことも辛いことも、ぜーんぶ分け合える!大事な友達なんや。ウチはそう思ってる」

サンドラ(仲間…大事な友達…か。今は色々と複雑な気持ちだけど、これだけはわかる)
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サンドラ(ボクは今は、独りじゃないんだ)

サンドラ「…ありがとう、二人とも。少し気分が落ち着いたよ」
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サンドラ「いつまでもこうしちゃいられない。行こう」

サンドラ「ウルフルのことも心配だ。彼を放ってはおけない」

モニカ「ウルフル…あの老爺ね。決して悪い人じゃないようだけど…アイアンハンドの一味であることに変わりはないわ。どうするつもりなの?」

サンドラ「衛兵が乗り込んでくる前に安全な場所まで逃がすつもりだよ。その後はボクが面倒を見る。彼の顔は割れていないハズだから、後は静かに暮らせるだろうさ」

モニカ「…わかったわ。夜明けには衛兵が様子を見にやって来る予定よね。早く彼の所へ行きましょ」 

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サンドラ「ウルフル、戻ったよ!さあ、ここを出よう!」

サンドラ「…ウルフル?ウルフル!!
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 ウルフル「サンドラ…は、早かったのう…」

サンドラ「ど、どうしたんだいウルフル!?ど、どこか悪いのかい?」

ウルフル「まったく…アイツは相変わらず薬の調合が下手くそよの…お前さんが戻ってくる前には終わっておるはずだったんじゃが…」 

サンドラ「な、何を言って…?…!!…そ、その手の粉末は…まさか…」

ウルフル「…うむ、まあ…毒じゃよ。一味の中に薬師がおった、じゃろう?あやつに作ってもらったんじゃが…」

サンドラ「どうしてそんなことを…!ようやく自由になれるっていうのに!」

ウルフル「お前さんのことは…わかっておるつもりじゃよ…ようやく…新たな人生を歩み出せようというのに…老いぼれが迷惑を掛ける訳にはいかん…」
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サンドラ「そんな…そんなこと…!…何も死ななくたって…!」

ウルフル「…わしはもう疲れた…。何も映らぬ目、老いさらばえた身体…ならず者どもの情けを享けながら惨めに生きる毎日…」

ウルフル「連中がわしの前でどんな非道を行おうと、哀れな娘が助けを求めようとも…わしにはどうすることもできなかった。わしは何もしようとしなかった…」

ウルフル「…これはけじめなんじゃ。お前さんが気にする必要はない。…お前さんは、お前さんの道を歩めばいい」

サンドラ「…ウルフル…」

ウルフル「う…うぐうぅぅぅぅうう…ぐむむむぅぅ…」

サンドラ「ウルフル…!」

ウルフル「よ、ようやく毒が回ってきた…ようじゃ…の…。サンドラ…お前さんには苦しむ姿は見られとうなかったんじゃが…」 

ウルフル「…まあ、よいわ。…お陰でこうして…きちんと別れを告げることが、できる…」

ウルフル「よいか、サンドラ…。わしのことも…アイアンハンドのことも忘れろ。これからの人生は…お前だけのものじゃ…」 

ウルフル「幸運を…祈っておるよ…サンドラ。達者…で…な…」
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 サンドラ「ウル…フル…っ!
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モニカ「…」

ミラ「…」 
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 サンドラ「………二人とも、行こう」

モニカ「…大丈夫なの…?」

サンドラ「そりゃ大丈夫…な訳ないけどさ…それでも行かなくちゃ」

サンドラ「ウルフルは最期までボクのことを思ってくれた。その思いに応えなくちゃならない」

ミラ「サンちゃん…」グスッ

サンドラ「キミが泣いてどうすんのさ。ほら行こう。衛兵たちもそろそろ着くはずだ」
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サンドラ(ウルフル…ありがとう。ボクは生きるよ…自分の人生を。自分だけの人生を。しっかりとね)
 


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 サンドラ「朝焼けか…綺麗だね…」

戦いは終わり、陽はまた昇る。彼女たちの人生は、まだまだこれから。


To be continued...