ホワイトラン近郊、ホワイト川の監視所
衛兵「…アイアンハンド団め。今日も動きは見せないか…」
頭「まったく、今日はいい天気だな。こんなところで山賊共を監視し続けるのがもったいないくらいだ」
衛兵「これは…カイウス指揮官」
カイウス指揮官「お務めご苦労。奴らの動きはどうだ?」
衛兵「相変わらずです。ここ一週間、静寂を保ったまま全く動きを見せていません」
カイウス指揮官「ふむ…夜間についても同様か?」
衛兵「はい。以前は少数で夜影に紛れ包囲の突破を試みてくることがあり、数度包囲を破られたこともありましたが、最近はそれすらも」
カイウス指揮官「…我々の封じ込め作戦が功を奏している、ということかね」
衛兵「…恐れながら…」
カイウス指揮官「構わん。話せ」
衛兵「私には、そうは思えません。この静寂が不気味なものに思えてならないのです。まるで、そう…嵐の前の静けさのような」
カイウス指揮官「嵐…か」
カイウス指揮官「封じ込め作戦を開始してから早2ヶ月。何度か補給に成功しているとはいえ、奴らもこのままではジリ貧だろう。現状打開のため、何か大きな行動に出るとしても不思議ではない」
衛兵「は…。もしそうなった時、我々だけで奴らを防ぎ止められるかどうか…」
カイウス指揮官「…一応、手は打ってある。あまり期待はできんがな」
衛兵「と、申しますと?」
カイウス指揮官「首長が腕の立つ賞金稼ぎを雇った。早ければ明日にでも動き出すだろう」
衛兵「賞金稼ぎ、ですか…到底奴らを討てるとは思えませんが…何せ我々衛兵隊の攻撃を幾度も迎え撃っているのですから」
カイウス指揮官「まあ、駄目で元々ってやつだ。それに、衛兵隊のような組織だった動きは感付かれやすい。少人数による奇襲の方が望みがあるかも知れん」
衛兵「…奴らを討てるのであれば誰であろうと構いませんが…」
カイウス指揮官「まあ、お手並み拝見といこうじゃないか。俺は失敗する方に100ゴールド賭けるよ」
衛兵「…僭越ながら、それでは賭けにならないかと…」
カイウス指揮官「ハッハッハッハッハッハッゲホッゲホゲホッウゲッ」
衛兵(緊張感あるのかないのかわかんないなこの人…しかもむせてるし…)
ゴゴゴゴゴゴゴ…
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場面は変わりホワイトラン市内、町外れの一角にて…
サンドラ「…奴はここしばらく大人しい。でもそれは大攻勢に向けての準備期間に過ぎない」
サンドラ「早ければ2、3日中に、奴らは動く。恐らく夜の闇を利用して包囲を突破し、近くの醸造所や農場を徹底的に荒らし回るだろう」
サンドラ「そうなる前に、仕掛けないといけない。昼間は見張りがいるからダメだ。決行するなら夜がベストだ」
モニカ「…随分と奴らについて詳しいじゃない」
サンドラ「…まあ、ね」
モニカ「率直に言うわ。私達はアンタを信用していない」
モニカ「あなたの現れるタイミングといい、あなたの持つ奴らについての情報といい、怪しい点が多すぎる。奴らのスパイと思う方が自然だわ」
ミラ「…」
サンドラ「まあ、そうだろうね。ボクが逆の立場だったとしても、モニカ。キミと同じ事を考えると思う」
サンドラ「でも仮にボクが奴らのスパイだったとして、だ。ボクがこうやってアイアンハンドの情報を話すのは君たちを誘き寄せるための餌だったとする」
サンドラ「でもそれで奴らには何か得があるのかな?君たち二人を釣って返り討ちにしたところで、それは却って宮廷を刺激する結果になりかねない」
サンドラ「そうなれば宮廷は無理を押してでも、これまでより大規模な衛兵隊を組織して討伐に出てくるかもしれない。それは連中だって避けたいはずさ」
モニカ「…それは確かに…」
サンドラ「まあ、それだけでボクを信用しろとは言えないけどね。でもキミ達だって奴らを倒さなくちゃならない理由があるんだろう?どっちみち奴らの所へ行くんなら、人数は多い方がいいと思うけどね」
モニカ「うーん…どうしたものか…」
ミラ「…お姉」
ミラ「…ウチは、サンちゃんのこと信用できると思う」
サンドラ「さ、サンちゃん?」
ミラ「長年商人達と旅しとったから、何となくわかるねん。ホンマ、何となくやけど…サンちゃんは嘘は吐いてへん」
サンドラ「何となく、って…。そんな理由で?ヘタすれば命取りになるかもしれないってのに」
ミラ「おとんの後ろで商人達の駆け引きを色々見てきたけど…自分(サンドラのこと)みたいな話し方する人間に嘘吐きは一人もおらんかった」
サンドラ「それってただの経験則だろう?経験だけで全てを判断するのは危険じゃあないかな…」
モニカ「…わかったわ。ミラ、こういう時のあなたの勘は百発百中だものね」
サンドラ「えっ」
モニカ「それに、私達を騙そうとしているのなら、自分にとって不利な言動は極力しないハズよね。でもサンドラ、あなたにそういう素振りは見られない」
モニカ「ミラが信じるなら、私だって信じるわ」
サンドラ「えぇー…」
サンドラ「まったく…面白い姉妹だね、キミたちは」
モニカ「あなたが何故アイアンハンド団のことに詳しいのか…とか、気になることはいくつかあるけれど、自慢の妹の言うことだもの。これからよろしくね、サンドラ」
ミラ「さっすがお姉は話がわかるぅ~!よっしゃサンちゃん頼りにしてるでぇ~!」
サンドラ「ハハ、なんか調子狂うなぁ…。ボク自身のことは、まだ話せないけれど…必ず勝とう。こちらこそ、よろしく。ミラ、モニカ。」
チーム「ミラモニサン」結成!!
言えない秘密を残したまま、仲間に加わった女戦士サンドラ!
一抹の不安が残るも、三人の眼差しは来るべき死闘に向けて確と燃えていた!!
次回へ続く!!
ミラ「チーム名安直すぎひん…?」
サンドラ「…まあ細かいことはいいんじゃない?」
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