サンドラ「…来たよ。ウルフル」
ウルフル「…その声、少し大人びたのう。サンドラ」
サンドラ「あれから5年も経ったんだ。当然だよ」
ウルフル「また会えて何よりじゃよ。あの日、遠くから聞き覚えのある音色が聴こえた時はまさかと思ったが…」
サンドラ「笛、上手くなっただろう?あれから練習したんだ。伝わるかどうか不安だったけど…」
ウルフル「昔教えた事が役に立ったようじゃな。しかしお前さん…たった三人で来るとはのう。よっぽど面子に自信があるようじゃの」
サンドラ「ミラとモニカ、頼もしい仲間さ。ところで、よくボクらの人数がわかったね?」
ウルフル「声と足音じゃよ。目が見えん分、耳は良い。でなければお前さんの笛の音だって聞き逃しとったわ」
サンドラ「さすがウルフル。…中はどんな状況だい?」
ウルフル「殆どの連中は泥酔状態じゃよ。ここ数日はどんちゃん騒ぎじゃったからの。寝首を掻くなら絶好の機会じゃろうて」
サンドラ「…いいね」
ウルフル「…だがボスは…ハジバールはどうか知らん。あやつは馬鹿みたいに酒に強い。いつもの見晴らし台で涼んでおるところかのう」
サンドラ「つまりアイツ以外は無防備状態ってことだね。ありがとうウルフル。これなら上手くいきそうだ」
ウルフル「幸運を祈る、サンドラ。わしが言うのもなんじゃが、かつての恨み、今こそ晴らしてやるんじゃ」
サンドラ「ありがとう。じゃあ行ってくるよ、ウルフル。また後でね」
ウルフル「…」
サンドラ「…どうしたんだい?」
ウルフル「…いや、なんでもない。近頃はボーっとなることが多くての。年を取るというのも辛いもんじゃよ」
ウルフル「わしのことは構うな。早く行け。奴らもいつまでも酒に酔っていてはくれんぞ」
サンドラ「…わかった。 じゃあ行こうか。ミラ、モニカ」
ウルフル「…さらばじゃ」ボソッ
__________
サンドラ「この先に奴らがいる…。二人共、準備はいいかい?」
モニカ「ええ、もちろんよ」
ミラ「こっから先は抜き足差し足…なんか緊張してきたわ…」
山賊「グゴゴゴ・・・ズピピピピピ…」
山賊「ンガァ~ンガング…ンニャッピ」
ミラ(なんちゅーいびき立てとんねん…しかも酒臭っ)
サンドラ(見事な泥酔っぷりだ…これなら何しても起きそうにないね)
モニカ(好都合だわ。さっさとやっちゃいましょう)
ミラ(いい夢見てるところ堪忍な?これもウチらの夢のためやねん、許してな!)
ブスッ ザクッ…
__________
山賊「う~頭いて…ったくアイツら…俺はあんま飲めねーっていつも言ってんのによ…」トントントントン
山賊「まあいい、とにかくさっさと酔い覚ましの薬を用意してやらねーと。ったく世話の焼ける奴らだぜ…」
モニカ「…アイツは私に任せて」
ミラ「後ろ向いてるしチャンスチャンス!サンちゃんに腕前見したってーな! 」
モニカ「任せなさいって」
山賊「決行まで残り2日もないっつーのに…どうしようもねー奴らだz…!?」
山賊「なん…だと…」
サンドラ「…お見事」
モニカ「いっちょあがりってね。これでこの辺の敵は全部始末できたかしら?」
サンドラ「ウルフルはこの奥に見晴らし台があるって言っていたね。きっと上へ続く道があるんだろう。先に進もう」
ミラ「うそん。アイツら起きてるやん…話と違うでおっちゃん!」
サンドラ「…まあ仕方ないさ。ウルフルは目が見えないんだ。とはいえ、これは困った状況だね」
モニカ「…あれ、見える?奥の檻の中。いかにも腹を空かしてそうな狼が一匹」
わんわんお「ガルルルルルルル…」
ミラ「ホンマや。アイツを上手いことけしかけられへんかな…?」
モニカ「そんな都合のいい話がある訳が…あら?」
モニカ「…まさかそんな訳ないわよね…。…でも、物は試しって言うし…?」
サンドラ「いくらなんでもそれはないでしょ…そんなご都合展開ある訳が…」
ミラモニサン(あったーーーーーーーーーーー!!)
オオカミ「ウゥゥゥ~ガウガウガウガウガウ!!」
山賊「うわっ!?いきなり檻が…!?」
山賊「何でまた一体…!?アイデデデデッ!!」
サンドラ「…何か上手く行き過ぎてる気がするけど、まあ好機には違いない。コソコソするのは終わりだね。いっちょひと暴れしてやろうか」
ミラ「よーし今や!突撃~!!」
山賊「な、なんだお前ら…ッ!?」
サンドラ「答えてる暇は…ないッ!!」
山賊「ぐあ…っ!!」
モニカ「…どこを見てるのかしら?」
モニカ「目の前の獲物だけに気を取られるのは…命取りよ」
ビシュッ <グエー!!
………………
__________
サンドラ「…片付いたね」
モニカ「二人とも、怪我はない?」
ミラ「へーちゃらへーちゃら!かすり傷ひとつ負ってへんで!」
サンドラ「いよいよこの先がアイアンハンド団のボス…ハジバールがいる見晴らし台だ」
サンドラ「今の騒ぎを感づかれたかも知れない。急ぐべきだろう。…でも、その前にひとつだけ。ここまで付いて来てくれたキミたちには話しておきたい」
モニカ「…聞くわ」
サンドラ「もう察しは付いてるとは思うだろうけど…ボクはかつてアイアンハンド団の一味だった」
ミラ「…」
サンドラ「一味、というのも違うかな。…攫われたんだ。11歳の時だった」
サンドラ「目の前で両親を殺されて…悲しむ暇もなくヤツらに連れ去られ、そして…まあ、後は想像付くだろう…?」
サンドラ「ウルフルだけがボクの味方だった。笛を使った暗号を教えてくれたのも彼だった。孤独と絶望の中生きてこられたのも、ウルフルがいてくれたからだと思う」
サンドラ「アイアンハンド団を抜け出せたのは16歳の頃だった。ウルフルの手助けもあって、ヤツらはボクを死んだものと思っていた」
サンドラ「それからの5年間、ボクは復讐のために生きてきた。気付かれないようにヤツらの後を追い、機会を待った」
サンドラ「そして遂にその時がきた。ボクはここで、自分の人生を取り返す」
サンドラ「ここまで来れたのはキミたちのお陰だよ。でも、ここから先は…奴との決着だけは…ボクだけにやらせて欲しい」
ミラ「…サンちゃん…」
モニカ「…ここに来る前にあなたを疑ったこと、謝るわ。ごめんなさい」
サンドラ「構わないさ。あの状況で疑うなっていう方が難しい話だよ。それでもボクを信じてくれた、それだけで充分さ」
サンドラ「・・・と。これ以上アイツを待たせちゃおけないね。行こうか、二人とも。ボクの結末、どうか見届けて欲しい」
次号、決戦。
To be continued...
コメント
コメント一覧 (2)
さすが奇襲もあざやかでございます!モニカさんの鋭い眼光にいつもながら惚れ惚れ。
サンドラさんそんな過去がおありだったのですね。山賊許すまじ!
盗賊ギルドのサファイアさん然り、スカイリムの事情も考えればそんな話もたくさんあったんでしょうね。
そもそも潔白な山賊なんていないか……。
次のお話も楽しみです。